目に関するご説明
角膜移植について
北新宿の眼科『新宿眼科クリニック』(西新宿徒歩4分・中野坂上徒歩8分)の医師が、角膜移植について詳しくご説明いたします。
※この文章は、角膜移植手術をうける患者さんのご理解を深めるために書かれたものです。できるだけ多くの方のお役に立つように書いてありますが、病状は一人一人違いますので、くわしいことは主治医にお聞きくださるようお願いします。
角膜とは
角膜とは、眼球の最も前にある透明な膜で、ぞくに「黒目」と呼ばれる部分です。角膜の役割は大きく分けて3つあります。
- 光を通す。すなわち透明であること自体が角膜の大きな役割です。
- 光を屈折するレンズの役割をします。
- 眼球の壁の一部を構成します。
角膜移植とは、どのようなものですか?
角膜移植とは、上に述べた角膜の働きが損なわれ、かつ内科的治療でこれを治すことができないときに適応となります。具体的には
- 角膜が混濁したとき。
- 角膜が光を正しく屈折しないとき。
- 角膜が穿孔したとき。
に考慮されます。
角膜移植の原理は、悪くなった角膜を取り除き、新しい角膜を縫い付けることです。
人工の角膜は開発されていないので、すべて亡くなった方から提供していただいた角膜を使用しておこなわれます。
角膜の提供は、どのような方からなされるのですか?
角膜を提供する意思のある方がなくなった後に眼球を提出し、これを手術に適しているかチェックします。 残念ながら、わが国における角膜の提供件数は不十分なので、当院では海外のアイバンクの協力をあおいで角膜を入手することをおこなっています。
角膜移植の原因となる病気には、どのようなものがありますか?
わが国の角膜移植で頻度の高い原因疾患は、1.円錐角膜、2.角膜白斑、3.水疱性角膜症、4.角膜変性症、5.角膜化学傷、6.角膜化学傷、熱傷などです。
このほか、スティーブンスジョンソン症候群という、薬による副作用でも、目に濁りが生じ似たような状態となります。
術後の視力について
角膜移植をするとどのくらい見えるようになりますか?
- 角膜以外に悪いところはないか?
角膜以外に、緑内障や網膜の病気があると、視力の回復は当然悪くなります。また、特別な病気がなくとも年齢が高くなると目の機能が落ちて回復に影響することがあります。
- 移植角膜の透明性
手術後に角膜にむくみがでたり、しわができると視力に影響します。
- 乱視の程度
乱視は角膜の歪みによって変わります。乱視を減らすには手術後に糸の調節などを行いますが、それでも歪みが残って視力に影響することがあります。
手術後、3~6ヶ月の間が糸の調節を行える期間です。
乱視の調整についての論文
*島崎潤. 角膜移植後の視機能. 臨床眼科 1997;51:152-154.
*Shimazaki J, Shimmura S, Tsubota K. Intraoperative versus postoperative suture adjustment after penetrating keratoplasty. Cornea 1998; 17: 590-594.
手術後に視力がでるまでは、どのくらいかかりますか?
術後の視力回復の早さには大きな個人差があります。同時に行う手術が多いほど、また年齢が高いほど回復に時間がかかる傾向がありますが、それ以外に、移植角膜と患者さんとの適合性(相性)が大きく関係します。一般に角膜移植後に視力が充分にでるまでに、早い人でも1ヶ月、遅い人だと半年以上かかるので、すぐ良く見えるようになる人はむしろまれといえるでしょう。
手術後は、今まで使っていた眼鏡やコンタクトレンズは使えますか?
角膜移植後は、近視、遠視、乱視などの度数は大きく変わってしまうので、今までの眼鏡やコンタクトレンズは合わなくなってしまいます。手術数ヶ月後は、度数が安定しないので、度数をちゃんと合わせるのはその後になります。
両方の目とも移植が必要だといわれましたが、一回の手術でできますか?
一回の手術では片方の目のみを手術します。その後3-6ヶ月してから、もう片方の目を手術します。